アロマセラピーと肉体感覚~長谷川桜子

気持ちを向上させるアロマ

自信をつけてくれる精油

パーティーに行く前に、あるいははじめての人にこれから会いに行くときに、「きついのを一ぱい」やるのがむかしからの頼りになる気つけ薬ですが、アルコール飲料が飲めない人間はどうしたらよいでしょう。こんな場合には、「自信をつけてくれる精油」を手首やネックに少しぬったり、お湯に張ったボウルに精油を入れて、立ちのぼる芳香を嗅いだりするとよいのです。

強さと自信をもたせる作用があるジャスミン油

例えば、ジャスミン油には、それを体につけた人に強さと自信をもたせる力があり、もっとも甘美で貴重な精油の一つです。ファラオが君臨した古代エジプトでは、ほんのひとにぎりの特権階級の人びとだけしかこの香りを身につけることはできませんでした。今日でもジャスミン油はほかの大半の精油類にくらべて「貴重」なものとなっており、値段もたいへん高いものです。しかし、これはほんのわずかでとても効果がありますし、特別な性質を数多くもっていますから、これを買うことはとてもよい投資になります。

よい雰囲気をつくる
ホームパーティにはクラリセージ油

パーティーなどを開くときに、明るい幸福感をおぼえさせる雰囲気をつくりだすには、へやのなかにクラリセージ油をまくか、お湯を張ったボウルにこの精油を2~3滴落とすかして下さい。

つんだばかりの花とハーブの香りとともに生活をすることはとってもすてきです。

精油はムードに合わせて選ぶ

精油類は、そのパーティーやお祝いごとなど、そのときどきの「ムード」にあわせて選ぶようにします。いくつか私の提案をあげましょう。

・夏の夜のパーティーには、ベルガモット油、オレンジ油、ローズウッド油
・クリスマスのパーティーには、乳香油、パイン油
・バレンタインデーのパーティーには、イランイラン油、バラ油
・からくてスパイシーな食べものが供されるディナーパーティーには、サンダルウッド油、パチュリー油
・こどもたちのパーティーには、オレンジ油、レモン油
・午後のお茶の会には、ゼラニウム油、ラベンダー油
・女の子たちのパーティーには、バラ油、またはローズウッド油

どんな精油を選ぶか、また、どれとどれを組みあわせるかは、あなたの個人的な好みと予算しだいです。

ランジェリーを香らせて
洗濯のすすぎの水に好みの精油を一滴落とす

ランジェリーに、あなた自身のパーソナリティーをもたせるために、こんど下着を手洗いするときに、その最後のすすぎの水に好みの精油を一滴落としてみて下さい。パチュリー油のような一部の精油は少しダークすぎ、重すぎます。しかし、イランイラン油、ゼラニウム油、バラ油、ジャスミン油、ネロリ油などはすてきでしょう。

衣装だんす用にアロマを

自分の好きな芳香でたんすと衣装だんすに香りをつけることができます。あなたが縫いものをなさらないなら、何かの精油を脱脂綿のボールにふりかけて、それを油をはじく材質でできた袋に入れ、それをたんすに入れるか、衣装だんすの内側にピンでとめたりするかしてもよいのです。縫いものをなさるなら、絹のポマンダーをつくってお友だちや愛する人のために美しい贈りものをこしらえることができます。絹かそのほかの軽い布を円く切りぬいて下さい(直径12センチにします)。布の周囲に糸をぐるりと縫いつけ、脱脂綿のボールをまんなかにおき、その中央の綿にお好きな精油または精油類をふりかけ、布でボールをつつんで芳香ボールにします。そして、最後に細いリボンで口をしばってしあげ、そのリボンでこのボールを衣服のハンガーにつるします。この精油としては、比較的揮発性の高い、したがって香りが長続きしないかるいカンキツ系のものよりは、イランイラン油、乳香油、サンダルウッド油、パチュリー油、ジャスミン油、バラ油といった、香りが長もちするものを使用して下さい。

防虫力のある精油

ビクトリア朝時代に、インドのカシミールからカシミヤのショールが輸入されたとき、そのショールはパチュリーの葉を入れた箱に納められていました。パチュリーのにおいには、虫を防ぐ力があったためです。このことは今日でも同じで、衣類につくガの幼虫の横行から衣類を守る精油はたくさんあります。

寝室に「閨房」のムードを
バラ油は古代から重宝されてきた

精油をへやにふりまき、ちょっと想像力をはばたかせるだけで、あなたはクレオパトラにもポンパドゥール夫人〔17世紀のフランスのルイ15世の愛妾だった美女〕にも、そのほか自分がなりたいと思うどんな人間にもなることができます。精油と香膏とはそのむかし、人びとが利用できた唯一の香料でした。合成の香料はまだ発明されていなかったからです。古代エジプトの屋形船の帆は、よく香油と香る水とにひたされて芳香をつけられましたし、クレオパトラは、表むきは事務的なやりとりをしながら、肌につけたジャスミン油でマルクス・アントニウスを誘惑したといわれています。バラ油はいつの世にも非常に尊ばれてきましたが、ローマの皇帝たちはことのほかその芳香が好きだったので、宮殿の庭園を流れる水路にバラ水を注いだほどでした。

人を陶酔させ、幸福感をかき立てる精油

精油のなかには、人を陶酔させ、幸福感をかき立てるものがあります。おへやのなかに、古代の文明の魔術と神秘の香りをしみこませてみてください。バラ油、パチュリー油、ジャスミン油、イランイラン油といった精油がおすすめです。これらの比較的重い香調は、寝室にいっそうしっくりあうようです。それは、その香りが自然の体臭に似たところがあるためです。その反対にかるいカンキツ系の精油はさわやかな戸外とひろびろとした場所を思いおこさせます。

バラ油は比類のない高級で特別なもの

バラは、あらゆる時代を通じて好まれてきた香料であることはまちがいありません。バラは何世紀もの間使用されてきました。『カーマ・スートラ(8世紀に書かれたインドの性愛経書)』にも『におえる園〔16世紀のアラブで書かれた人間の性の神秘についての書〕』にもこれについて書いてあり、今日でもほとんどあらゆるハイクラスの香水にこれが配合されています。ローズ・オットー〔ブルガリア産の最高級のバラ油〕は、一つ一つの花からとれる精油の量が非常にわずかなので、これまでたいへん高価でしたが、これからも事情は変わらないでしょう。しかし、これがほかの精油にくらべて値段が高いといっても、これはとても長いこと心にとどまる性質があり、非常に濃縮されているので、少量できわめて香りが長もちします。私は、バラ油は比類のない高級なもので、ほかのどんな香りも自分にこんな特別な感じをおこさせるものはないと思っています。

ロマンティックなムードに

エキゾチックな精油(ジャスミン油、バラ油、パチュリー油、サンダルウッド油、イランイラン油、クラリセージ油)をたっぷり用い、あとは想像力を働かせて下さい。